用語集
「か行」の接着用語集
「か行」一覧表
用語集
あ行・か行・さ行・た行・な行・は行・ま行・や行・ら行・わ行「か」から始まる接着用語
開始剤|initiator
分解することによりラジアルやイオンなどの活性種を発生させて連鎖重合を開始させることのできる物質。少量の使用で大量の単量体を反応させ得ることから、触媒あるいは重合触媒と呼ばれることもある。例えばラジカル重合開始剤としては、熱や光により容易に分解してラジカルを生じる過酸化ベンゾイル(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などがある。さらにレドックス開始剤や有機金属化合物一酸素系などもある。イオン重合の開始剤としてはカチオン重合開始剤とアニオン重合開始剤に大別される。イオン重合では成長鎖末端に開始剤に由来する対イオンが存在するので、開始剤の種類により生成重合体の立体規則性が変化することがある。
=重合開始剤
関連用語:触媒、重合禁止剤
改質ゴム|modified rubber
ゴムに何らかの物質を作用させて、ゴム状弾性を保ったまま特殊な性質を与えたゴム。例えばメタクリル酸メチルをグラフトした天然ゴムは極性基が導入されたことで軟質ポリ塩化ビニルの接着剤となり、また無水マレイン酸を付加したゴムは主鎖中の二重結合が少なくなることで耐老化性が向上する。通常は、このように化学的な処理を加えたゴムのことを改質ゴムというが、適当な物質(改質剤)を添加して性質を変化させる場合も改質ということがある。
改質剤|modifier
プラスチックスやゴムなどの加工性、機械的性質、接着性などを改良する目的で添加される化学的には不活性な物質。例えばゴムの加工性改善のために添加するプロセスオイルがある。
関連用語:プロセスオイル
界面破壊|adhesive failure; adhesion failure
接着剤、不定形シーリング材、仕上げ材などが被着体との界面から剥離し、接着界面が破壊されること。試験表などではAFと表記される。
=接着破壊、剥離破壊、界面剥離
関連用語:凝集破壊、材料破壊
化学抵抗性|chemical resistance
接着剤などが酸、アルカリ、塩類などの水溶液、水および各種溶剤、各種脂肪、油類、セッケン類などの化学薬品や溶剤などに侵されない性質。試験方法はJIS K7114; K6911; K6858などに規定されている。
=耐薬品性
架橋|crosslinking
鎖状の高分子鎖間に化学結合で橋をかけること。架橋された高分子は通常三次元的に結合した橋かけ構造をもち、架橋点の数が十分に多ければ不溶不融なゲルを形成する。
=橋かけ
関連用語:網目構造
架橋剤|crosslinking agent
鎖状の高分子を架橋して橋かけ構造を形成させるのに必要とされる試薬のこと。架橋剤には対象とする高分子の構造により種々の試薬が用いられる。代表的な架橋剤としては、ゴムの加硫に用いられる硫黄化合物やパーオキサイド、不飽和ポリエステルの架橋に用いられるスチレンモノマー、エポキシ樹脂の硬化に用いられるポリアミンや酸無水物などが挙げられる。
=橋かけ剤
架橋密度|crosslinking density
=橋かけ密度重ね継手|lap joint
被着体を重ね合わせ、その部分を接着してつくった接合部のこと。二枚をはり合わせる単純重ね合わせ継手(single lap joint)や一枚の端部を二枚の板で両側からはり合わせる二重重ね合わせ継手(double lap joint)などがある。
=ラップジョイント、重ね合わせ継手、重ね合わせ接着継手
関連用語:オーバーラップ
可使時間|working life; pot life
反応形接着剤に硬化剤または触媒、もしくはその他の成分を混合してから粘度や状態が使用に耐えなくなるまでの間の使用可能状態が保たれている時間。評価基準は用途、塗布法に応じて主観的に決定することが多い。その他に粘度の経時変化の追跡や発熱曲線の変化点から割り出す方法もある。主剤となる樹脂の履歴(貯蔵寿命など)、添加される硬化剤の種類と添加量、混合時の温度や容量、その他の環境要因で変化する。特に発熱反応を伴う系はその傾向が強いので、できるだけ実際に近い条件下での測定、把握が必要である。接着剤の場合、とくに塗布可能時間(spreadable life)ということもある。試験方法はJIS K6870などに規定されている。
=可使用時間、ポットライフ
カゼイン|casein
牛乳または大豆から得られるタンパク質の一種。接着剤として使用される。また、これに20~30%の水を含ませ、押出機で管状や棒状に成形した後、3~7%のホルマリンに10日ないし2か月間浸漬して硬化させるとカゼイン樹脂(casein resin、 casein plastics)が得られる。この樹脂は切削が用意、染色が可能、光沢があり熱湯についけると変形も可能などの特徴を有する。古くは象牙、サンゴの代用品、ボタン、そろばん珠、文房具として用いられた。
カゼイングルー|casein glue
牛乳や大豆中のカゼインを原料として作られる接着剤。カゼインに石灰、カセイソーダなどのソーダ塩、および防腐剤などを加えて調製される。粉末状で保存しておき、使用時に水を添加し十分粘性がでるまで混合する。主として木材用接着剤、特に合板用接着剤として古くから用いられてきたが、耐水・耐久性に乏しいので、最近は特殊な用途のみに用いられている。なお酪豆グルー(casein-soybean glue)は、カゼインと脱脂大豆粉および各種の配合薬剤を加えた冷圧用の接着剤で、酪豆グルー1号はカゼイン7、大豆粉3の割合、同2号はカゼイン3、大豆粉7の割合で混合した接着剤である。
=カゼイン接着剤
可塑剤|plasticizer
硬い高分子物質や樹脂に添加することにより可塑性を与え、柔軟性、加工性を高める物質。樹脂との相溶性の良いものを一次可塑剤、良くないものを二次可塑剤という。例えばポリ塩化ビニル樹脂ではフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系などの可塑剤が用いられている。可塑剤の作用機構は硬い樹脂の強い分子鎖の間に入り込み、その凝集力を弱めて可塑性を与えるものであり、使用量によって硬質、軟質となる。低分子の可塑剤では長期間に表面に移行することがあり(ブルーミング)、性能の変化が生じる。これを避けるために共重合などによる内部可塑化が図られている。
関連用語:二次可塑剤、ブルーミング、軟化剤
片面塗布|single spread
接合部の被着体の一方の接着面のみに接着剤を塗布すること。例えば木質材料生産において、集成材はラミナに片面塗布、合板は単板に両面塗布が行われ接着されている。
関連用語:両面塗布
カップリング剤|coupling agent
補強材や充てん材などの無機質と樹脂の間の接着性を向上させるための表面処理剤。強化プラスチックや複合材料は、ガラス繊維やカーボン繊維などの基材をポリエステルやエポキシ樹脂などで接着し、出発物にない高度の機能を持たせたものである。しかもこの機能はこれらの基材表面が、樹脂と高度の接着性をもつことが前提となる。また充てん材を用いた場合も、その表面と樹脂との接着が問題となることは言うまでもない。ところがこれらの基材や充てん材はほとんどが無機質であり、樹脂は有機物である。したがって双方の線膨張係数や弾性率には約1桁の差がある。さらにその接着は、強度だけではく、耐候性、化学抵抗性、耐熱性、耐寒性もしくは耐衝撃性など望まれる性能が多い。この問題を解決するために生まれたのがカップリング剤である。最初開発されたのはクロム系処理剤のボラン(du Pont社)であり、後に多数のシラン系やチタネート系処理剤が開発された。これらの処理剤は水溶液で加水分解されて水酸基を生じ、基材表面の水酸基と反応して化学結合を作り、樹脂と良好な接着が可能な表面が現れると説明されている。しかしカップリング剤が基材や充てん材表面に単分子層を作る場合にはこの説明でよいが、実際の使用量はそれよりもはるかに多い。また、基材表面に水酸基をもたない場合にも有効な場合もあり、その機構については今後なお検討の余地を残すというべきであろう。
関連用語:シランカップリング剤
可とう性|flexibility
物質が柔軟であり、曲げても折れず、外力によってしなやかにたわむ性質。=可撓性、微弾性
加熱硬化型接着剤|heat setting adhesive; heat curing adhesive
加熱によって硬化する接着剤。カプセル型接着剤|encapsulated adhesive
特定の成分(主に硬化剤)をマイクロカプセルに内包し、主剤の中に均一混合した状態の接着剤。加圧や加熱などによりマイクロカプセルの皮膜が破壊し、硬化剤が放出されるまでは安定性を保持できる特徴がある。
加硫|vulcanization
生ゴムに硫黄あるいはその他の薬剤を加えて反応させ、塑性流動の減少、表面タックの減少、引張り強さの増強などの変化を起こすこと。分子論的には、ゴム分子間に橋かけ構造が導入されることで上記の物性の変化が起こる。通常のゴム製品は、生ゴム(未加硫ゴム)を素練りして可塑化し、補強材(カーボンブラックやシリカ)、加硫剤、その他種々の配合剤を混合して成形と同時に加硫する。ゴムの接着の場合、加硫ゴムは接着しにくいので、未加硫ゴムを貼り付けて加硫と同時に接着する方法をとる場合が多い。
関連用語:架橋
加硫促進剤|vulcanization accelerator
加硫剤との少量の併用により、ゴムの加硫時間の短縮、加硫温度の低下、硫黄量の減少などをもたらし、ゴム物性の向上のために使用される試薬のこと。無機系と有機系があるが、現在では無機系を使用することはほとんどない。アルデヒドーアミン類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類など多くのものがあり、ゴムの種類、製品の品質などによって使い分けられる。
関連用語:促進剤
カレンダー|calender
内部から加熱あるいは冷却できる複数本のロールを配列した連続圧延機のこと。プラスチックあるいはゴムのシートやフィルムの成形、布や紙などへのプラスチックあるいはゴムの被覆などに使用される。カレンダーロールを用いて生地にゴムやプラスチックをはり合わせる操作を特にトッピングという。ロールの配列により直立形、傾斜形、L形、逆L形、Z形、傾斜Z形などの形式がある。
関連用語:のり引き
感圧接着剤|pressure-sensitive adhesive
=粘着剤感温接着剤|heat-sensitive adhesive
熱をかけることにより被着体の表面をぬらし、その後固化することによって接着を完結する接着剤。一般的には、固化方式を熱を取り除く(冷却する)ことによって完結するホットメルト接着剤を指す。
関連用語:ホットメルト接着剤
環化ゴム|cyclized rubber; cyclorubber
生ゴムに硫酸、有機スルホン酸、塩化スズ、塩化鉄などを作用させて得られるゴム誘導体。不飽和度は元のゴムよりかなり低くなっており、熱可塑性の樹脂状であり、異性化反応により分子内に環状構造を有していることから、このように呼ばれている。金属とゴムの加硫接着剤として用いられる。
含浸樹脂|impregnating resin
多孔質の無機または有機物の絶縁材料に含浸させ、その強度、絶縁性もしくは耐湿性などを改善するための樹脂。普通エポキシ樹脂やポリエステル樹脂などをワニス状にしたものが用いられる。また、強化プラスチックや複合材料で熱硬化性樹脂の半固体状縮合物を補強材にあらかじめ含浸させる樹脂も含浸樹脂と呼ばれることがある。
ガン用接着剤|gun-applied adhesive; gunnable adhesive
ガンで押し出して使用できるように設計された接着剤。現場で使用するのに便利なように押出し用ガンに装填した接着剤もある。
=ガンナブル接着剤
「き」から始まる接着用語
機械的接着|mechanical adhesion
被着体表面の空隙に接着剤が侵入硬化し、その投錨効果によって接合すること。一般に接着界面には分子間力、静電引力、化学結合など種々の相互作用力が考えられるが、被着体表面の空隙に接着剤が流入して固化することも界面の結合力の一因となる。マクロにいえば、ほぞや釘のような効果であり、アンカー効果が代表的である。これに対し、界面に化学的結合力が作用している場合は、固有接着、比接着といわれる。
関連用語:アンカー効果、固有接着
基材|substrate
接着、塗装、コーティング、シーリングなどにおいて、その表面に接着剤、塗料、コーティング材、シーリング材などを塗布する材料。接着では被着体(材)のことを指す。
=サブストレート
関連用語:被着体
希釈剤|diluent
接着剤あるいは塗料の固形分濃度および粘度を低下させるために使用する液体のこと。一般にはシンナーともいう。エマルション系では水が希釈剤として使用される。
キュア|cure; curing
熱硬化性樹脂またはそれを主成分とする接着剤、もしくはゴムなどに対して硬化剤、硬化触媒、加硫剤または促進剤などを添加して、常温または加温下で網目構造を形成させ、所期の強度や物性を持つ状態とすること。分子鎖生長と網目形成によって硬化物は三次元網目を形成する。硬化時の温度が低すぎたり、時間が短すぎて強度や物性値が所期の値に達しない場合はアンダーキュア(undercure)、温度が高すぎたり、時間が長すぎて劣化を伴う場合にはオーバーキュア(overcure)と呼ばれる。ゴムにおける網目形成段階は加硫とも呼ぶ。熱可塑性樹脂でも、モノマーに硬化触媒などを加えて重合させ、所期の強度や物性の状態とすることを硬化と呼ぶ。ただし、この場合には分子量の大きい鎖状高分子が生成されるのみで、網目は形成されない。また、熱可塑性樹脂や天然高分子の溶液、エマルションなど液体状態のもの、もしくはホットメルト接着剤などの溶融状態のものが固化して接着力や強度を示す状態も硬化という場合がある。
=硬化
関連用語:後硬化、アンダーキュア、オーバーキュア、プリキュア
強化木|reinforced wood; reinforced laminated wood
単板にフェノール樹脂を含浸させ、これを一定の枚数重ね合わせた上でホットプレスで加熱加圧するして作られた硬質な改良木材。凝結|aggregation
コロイド粒子が凝集して沈殿する現象。場合により凝縮の意味で使われることもある。沈殿は加熱、冷却、せん断力により生じることもあるが、一般に電解質の添加により生じることをいう。少量の電解質を加えるとコロイド表面の電荷が中和され不安定になり凝結する。一定時間内に凝結させるに必要な電解質濃度を凝結価という。厳密には、コロイドでは段階的に軟凝集(flocculation)、凝集(agglomeration)、凝結(aggregation)へと経過し、各々を区別しなければならない。凝結を起こさせる物質を凝結(凝固、凝集)剤といい、塩化カルシウム、ミョウバン、ギ酸、酢酸、硫酸などがラテックスや高分子エマルションから固形分を取り出すときに用いられる。
=凝固
凝集|cohesion; agglomeration
物質を構成する分子が分子間力によって結合している状態。凝集エネルギー密度|cohesive energy density
無限に離れている原子または分子をその温度で固体状態に凝集させたときに放出するエネルギー(凝集エネルギー)を原子あるいは分子の体積で除した値。=CED
関連用語:溶解度パラメーター
凝集破壊|cohesive failure
見かけ上接着剤層の内部に生じた破壊。試験表などではCFと表記される。
関連用語:界面破壊、材料破壊
共重合|copolymerization
2種類以上のモノマーを混合して重合を行い、異種モノマー単位を1分子内に共存させる重合。=コポリメリゼーション
共重合体|copolymer
2種類あるいはそれ以上のモノマー単位が1分子中に共存した高分子。共重合体中のモノマー構造単位の配列は一般に不規則だが(ランダム共重合体)、二成分系共重合体において構成単位が規則正しく交互に配列しているものを交互共重合体という。一方、同種の構造単位が長く連なっている共重合体をブロック共重合体という。スチレンとイソプレンの共重合体ではリビング重合により合成したブロック共重合体(SIS)としてはじめて高性能が発揮される。高分子の鎖(幹)の所々から別種のモノマー単位からなる鎖(枝)が結合している共重合体もあり、これをグラフト共重合体という。グラフト重合は、化学反応によるほか、放射線などによっても行われており、表面改質などに利用されている。 構造の異なる繰り返し単位を含むポリブタジエン(cis、 trans、 1、2結合、 1、4結合など)などは共重合体とは呼称しない。
関連用語:ブロック共重合体、ホモポリマー
極性接着剤|polar adhesive
接着界面での力が双極子ー双極子相互作用や水素結合により支えられている接着剤。一般の溶媒形接着剤はこのタイプである。極性接着剤の界面接着力は、接着剤自身の性能だけでなく、被着体表面の極性に大きく依存する。したがって接着力向上にあたっては被着体表面の処理が重要となる。また極性接着剤は、無極性接着剤に比較して分子間相互作用が強いために接着剤自身の凝集力が大きい場合が多い。
「く」から始まる接着用語
空隙充填接着剤|gap-filling adhesive
空隙を多くもつ被着体(織物や木材など)を接着するのに適した接着剤。この接着剤を使用すると、空隙ないし網目の中に入り込んだ接着剤がとうびょう(投錨)効果を示し、力学的に強固な結合ができる。エポキシ樹脂接着剤などはこれらの目的に使うこともできる。硬化時に収縮が少なく、シーリング材として使用できる接着剤を指すこともある。
=空隙充填性接着剤
関連用語:アンカー効果
くし目ごて|teeth adhesive trowel; spreader comb trowel
コテ先に山形や歯形などの切込みがあるコテ。くし目ごてを使用して塗布すると、接着剤に山と谷が形成され、谷の部分が水分や溶剤を揮散させることで、被着体表面への馴染みがよいと同時に残留溶剤が少なくなり、山の内部は乾燥せずに液状を保つため、開放堆積時間を長くできることで広い面積に塗布してから接着工程に移れるなどのメリットがある。接着剤の種類により、切込みの形状や間隔、サイズの異なるものが使用される。
関連用語:アセンブリータイム
グラフト共重合体|graft copolymer
幹となる直鎖状の高分子に化学的に異なる構造の枝を有する共重合体。応用例としては表面改質、親水性付与、耐衝撃性の改良、接着剤の改良などがある。
グリットブラスト|grit blasting
グリット(先鋭なりょう(稜)角をもつ粒)を、圧縮空気その他の方法で表面に吹き付け、清浄にすること。塗料、ライニングをする場合の表面処理の方法の一つ。
関連用語:ウェットブラスト、サンドブラスト、ショットブラスト、ライニング、表面処理
クリープ|creep
一定応力の下で試料の変形が時間と共に増加する現象。応力をσ、時間と共に変化するクリープ量をε(t)とすると、クリープコンプライアンス(creep compliance) J(t)はJ(t)=ε(t)/σ で表される。クリープ現象は高分子のほか金属、コンクリートまたはセラミックスでも観察される。クリープ測定は応力緩和と共に、高分子の粘弾性挙動の解析にとって重要な手段である。
関連用語:応力緩和
グルーベース|glue base
大豆グルーの主原料となる脱脂大豆粉。大豆から大豆油をベンジンなどで抽出した後、大豆粕に残留した溶剤を減圧下に回収して得られる製品である。その大豆タンパクの熱変成を最小限にとどめ、水溶性である。普通の脱脂大豆粉は溶剤回収の際、加熱するためタンパク質は熱変成を受けるので、大豆グルーの基剤としては適さない。カゼイングルー、ユリア樹脂接着剤の増量材として用いられている。
クレージング|crazing
プラスチック成型品や接着剤層などで外部応力または内部応力などによって生じる微小な割れ。塗料用語としては、塗膜の割れの現象の一つで、浅割れに似て、それより深く幅広い割れを指す。一般にクレーズ(craze)とは、非晶性高分子の表面に多数発生する幅0.1~0.5μm、長さ1~10mm程度の細かい割れのことをいい、クラック(crack)はより大きな割れを指す。発生には引張応力と膨張応力、衝撃、繰返し応力もしくは内部応力などのほか、屋外暴露による日光、紫外線もしくは酸素などもその原因になると考えられている。
=ひび、ひび割れ
関連用語:割れ
クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂|cresol-formaldehyde resin
クレゾールとホルマリンとの反応によって得られる熱硬化性樹脂。クレゾールは3種の異性体があるが、その中でメタクレゾールだけが3官能性として働いて網目を形成する。しかしクレゾール中のこれら3種の異性体の分離は困難であり、実際にはこれらクレゾールの混合物とホルマリンからクレゾール樹脂がつくられる。反応過程はフェノール樹脂と同様で、酸性で反応させるとノボラック形の樹脂(クレゾールノボラック樹脂)となり、ヘキサメチレンテトラミンを加えて硬化する。アルカリ性で反応させたものはレゾール形樹脂となり、加熱もしくは酸を加えて硬化を行う。電気特性はフェノール樹脂よりも良く、接着剤、積層品、成形品、塗料などに用いられる。
関連用語:フェノール樹脂
クロム酸処理|chromic acid treatment
クロム酸あるいは重クロム酸を含む溶液で処理する表面処理法のこと。一般には重クロム酸塩と硫酸との混合液が使用される。強力な酸化力とエッチング性能を有していて、金属、ゴム、プラスチックなどの表面処理に適用される。航空機の製造においてはアルミニウム合金の接着の前処理として採用されており、FPLエッチングという呼名で知られている。ポリエチレンやポリプロピレンのような接着性に欠けるプラスチック材料でもクロム酸処理により接着性、塗膜密着性、めっき膜付着性を付与することができる。
クロロプレン系接着剤|polychloroprene adhesive
ポリクロロプレンを主剤とする接着剤。溶液形とエマルション形とがある。溶液形は、溶液タイプの接着剤の中でも非常に多く使用されている接着剤で、ゴム、皮、金属、木材、布、セラミックスなど多くの種類の被着体に強力に接着する。製法は、クロロプレンゴムにZnO、MgO、アルキルフェノール樹脂などを配合して溶液にする。この接着剤をそれぞれの被着体に塗布してしばらく放置し、溶剤を揮発させた後、接着剤塗布面をはり合わせると直ちに強度が発現する。このような接着剤はコンタクト形接着剤と呼ばれ、ゴム系の溶液形接着剤はこのタイプが多い。
関連用語:コンタクト形接着剤
「け」から始まる接着用語
ケイ酸ソーダ接着剤|sodium silicate adhesive
水ガラスから誘導される安価な無機接着剤。段ボールまたは合板などの接着に用いられる。
欠こう|straved joint
接着面の一部に接着剤の量が不足した部分、すなわち欠こう部(starved area)が生じた不完全な接着のこと。木材などの多孔質材料の接着において、被着体への接着剤の過剰浸透が原因で生じる。その他に接着剤塗布量の不足、堆積時間の不足、あるいは過大な圧締力を加えた後に減圧または除荷された場合などに生じる。
=スターブジョイント、欠膠
ケモレオロジー|chemorheology
高分子のレオロジー的挙動が、分子鎖の切断や結合など化学変化によって現れる現象。代表的な例としては、加硫ゴムの酸化劣化など各種の劣化反応にともなうレオロジー挙動の発現が挙げられる。
=化学レオロジー
ゲル化|gelation
溶剤に可溶なゾル(sol)状態から橋かけして溶剤に不溶となった高分子の状態。生成物をゲル(gel)という。この状態の高分子は三次元の網目を形成し、膨潤はするが溶解はしない。このゲル形成を始める点をゲル化点(gelation point)またはゲル点(gel point)と呼ぶ。この場合、ゲル化は必ずしも化学反応による必要はなく、特定の基の間で水素結合のような二次結合によっても可能である。接着剤や塗料の場合は、三次元網目が形成され溶剤に膨潤はするが溶解しなくなった状態のことを指す。膨潤の程度は系の橋かけ密度が高いほど小さいから、膨潤の度合いから橋かけ密度(網目鎖濃度)を求めることができる。
関連用語:膨潤、橋かけ密度
ゲル化時間|gelationtime; gel time
接着剤や塗料において、オリゴマーに硬化剤もしくは硬化触媒を加えてからゲルが形成するまでの時間。ゲル化時間は系の温度に敏感に影響されるから、その測定は各試験法に定められた温度の恒温槽内で行う。
嫌気性接着剤|anaerobic adhesive
空気または酸素が遮断されると硬化が開始される接着剤。空気または酸素の存在により硬化が抑制されており、空気または酸素に触れている間は液状を保っている。アクリル樹脂系接着剤であることが多く、例えば金属イオン存在下で酸素が遮断されることで急速に重合硬化するネジのゆるみ止めなどがある。重合硬化した硬化物は緻密な三次元網目構造を持つ樹脂になるので、耐薬品性、耐熱性、耐候性に優れ、また無溶剤であるので硬化する際の肉やせがほとんどなく、ネジ部、かしめ合い部、パイプ配管、フランジシール等の固定とシールに広く使用されている。レドックスラジカル重合を反応機構とする場合、一般的な開始剤としてはクメンハイドロペルオキシド、モノマーとして例えば2官能のものが用いられる。接着部からはみ出した嫌気性接着剤は、いつまでたっても固まらないため、最近では紫外線硬化性を付与し、はみ出した部分に紫外線を当てることではみ出し部を固めるものや、熱硬化性を付与したりするものも登場している。
「こ」から始まる接着用語
硬化温度|curing temperature; cure temperature
接着剤を硬化させるのに必要な温度。一般に硬化温度が高いほど硬化時間は短くなる。
=キュア温度
硬化剤|curing agent; hardner
接着剤の主剤と反応し、硬化を促進または調整する物質。硬化剤はオリゴマー成分と反応して網目への構成成分となるもの、硬化触媒は反応は行うが網目構成成分にならないものをいう。
関連用語:触媒、キュア
硬化時間|curing time; cure time
接着剤を硬化させるのに必要な時間。硬化開始から硬化物が予定された強度や物性の一定値に達するまでの時間を指す。硬化反応の速度は温度が高いほど増大する。したがって硬化時間は硬化温度の関数となる。
=キュア時間
関連用語:セット時間
高周波接着|high frequency bonding; high frequency gluing
誘電損失の大きい熱可塑性プラスチックを高周波電界内に置くと内部発熱して軟化する現象を利用して行う接着方法。塩化ビニル樹脂などは直接高周波によって接着できるプラスチックの代表例である。誘電損失の小さい材料(たとえばポリエチレン)については、金属酸化物のように誘電損失の大きい物質を添加、配合したフィルムまたはシートにすることにより、高周波接着を行うことができる。なお木材接着においても高周波接着が適用され、急速および均一加熱ができる。
=高周波加熱接着、高周波誘導加熱接着
合成樹脂接着剤|synthetic resin adhesive
合成樹脂を主要成分とする接着剤の総称。鎖状構造の熱可塑性樹脂を用いるものと、網目(橋かけ)構造をもつ熱硬化性樹脂を主成分とするものに大別される。この双方とも天然樹脂接着剤に比べて細菌やかひ(黴)に対する抵抗性は高く、耐水性も良いのが普通である。性能や特徴は主成分に用いる樹脂によってさまざまであるが、熱可塑性樹脂接着剤は耐溶剤性が低く、耐熱性も低いものが多い。これに対して熱硬化性樹脂接着剤は耐菌性、耐水性、耐熱性、耐候性、接着強度など高度の性能をもたすことが可能である。
関連用語:熱可塑性樹脂接着剤、熱硬化性樹脂接着剤
構造接着|structural-adhesive bonding; structural bonding
航空機、車両、建築物などの構造物に用いられる接着。その歴史は古く、イギリスでは1930年代に構造接着が航空機に用いられている。最初はジュラルミンやアルミクラッドを対象とする航空機から発展したが、その後宇宙工業、鉄道車両、自動車、建築物、複合材料などの分野に広がり、今日では木材接着の場合にも構造接着という用語が一般化した。
=構造用接着
構造用接着剤|structural adhesive
航空機、宇宙間飛翔体、車両、自動車、建築物などの構造物、またはその部材の構成に用いられる接着剤。熱硬化性樹脂をゴム質もしくは他の樹脂によって変性したものから発達したが、今日では性能は明らかでも、成分は明らかにされていないものが多くなった。せん断強さ、剥離強さなどの接着強度が大きいだけでなく、耐熱性、耐疲労性、耐クリープ性、耐候性、耐水性のほか化学抵抗性などに優れたものが多い。最初はフェノール樹脂をポリビニルホルマールやポリビニルブチラールで変性したものが1930年代から航空機に用いられた。その後フェノール樹脂をニトリルゴムやネオプレンで変性したニトリルフェノリック、ネオプレンフェノリックなどが現れた。エポキシ樹脂も広範囲の被着体に優れた性能をもつ構造用接着剤であり、近年では様々な性能を兼ね備えたエポキシ系構造用接着剤が開発されている。
=構造接着剤
合板|plywood
木材からむいた薄板、すなわち単板(veneer)に接着剤を塗布し、その繊維方向を1枚ごとに直交させ、奇数枚合わせて所要の厚さになるように加熱加圧接着した板。膨張収縮などによる寸法変化は小さく、強度に関して異方性が減少し、割裂が起こりにくい。広い面積の板が得られるので、建築材料、建設材料、家具、包装材料などに用いられている。接着剤としてはフェノール樹脂、ユリアメラミン共縮合樹脂、ユリア樹脂接着剤が用いられるが、要求される耐水性、耐久性により使い分けられている。
関連用語:単板積層材
高分子|macromolecule; synthetic resin
分子量のきわめて大きい分子のこと。鎖状構造を持つ場合には可塑性樹脂に相当し、その分子量は1万~数百万に達する。分子鎖間に橋かけを持つ場合には熱可塑性樹脂もしくはゴムとなる。ポリマー(polymer)、ハイポリマー(high polymer)はもともと重合したもの、もしくは高度重合体の意味であるが、高分子の一般的な呼称として用いられる場合も多い。重合や縮合によって作られた高分子は、分子量の異なるものの混合物である。そのため、高分子の集合体を高分子物質または高分子化合物と呼ぶこともある。また天然高分子と対比して合成樹脂とも呼ばれる。鎖状ポリマーでは分子量が1万を超えると高分子らしい性質が現れ始め、網状ポリマーではその網目鎖がほぼ完成された段階で高分子としての性質が完成される。鎖状構造の場合も橋かけ構造の場合も、共にかなりの機械的強度をもち、電気絶縁性、化学抵抗性、耐候性など様々な特徴を示す。これらの特徴に応じて成形品、注型品、積層品、複合材料、接着剤、塗料など広い用途に用いられている。
=合成樹脂
関連用語:ポリマー
固化|solidification
熱可塑性樹脂が溶融または流動状態から冷却され、その融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)以下となり固体となる現象。接着剤や塗料中の溶剤や分散媒体が揮発し、固体状態となる場合も固化と呼ばれる。熱硬化性樹脂が加熱や硬化剤などによって反応し網目鎖を形成して固体状態となる場合の硬化とは区別される。
コーキング材|calking compound; caulking compound
シーリング材のうち、非弾性形のもの。無皮膜性のものはポリブデン、ポリイソブチレンを主成分とし、皮膜性のものは、それにさらに不乾性油または半乾性油を加えたものである。コンクリートの継目充てんに用いられる材料をいう場合もある。
関連用語:シーリング材
ごばん目試験|cross-cut test
塗膜の接着力の簡単な試験方法。被着体に塗った塗膜に鋭利なカッターナイフで、ごばん目に切り口をつけ、その表面に粘着テープをはり付けて、一気に引きはがし、被着体に残ったます目の残存数、剥離の状況などを調べ塗膜の接着力の比較を行う試験をいう。接着力の経時変化をみる場合にも利用する。試験方法はJIS K5600-5-6などに規定されている。
=クロスカット法
関連用語:剥離接着強さ
コブウェビング|cobwebbing
接着剤をスプレイガンで噴射したとき、接着剤がクモの巣状の筋になってしまう現象。この筋状のものは、目的物の表面に集まってフィルム状になることはほとんどない。
関連用語:ウェビング
ゴム系接着剤|rubber adhesive
天然ゴムあるいは合成ゴムを主成分とする接着剤。初期接着力が特に優れており、使いやすい接着剤として工業的にも重要な位置を占めている。最大の特徴は、接着後も柔軟であることであり、風合いを重視される繊維材、皮革、ゴムなどの接着に使用される。供給形態として(1)各種ゴムを有機溶剤に溶解した溶剤形(2)水分散タイプのラテックス形(3)液状ゴムを主成分としたオリゴマー形(4)代表的な熱可塑性エラストマーであるスチレン系ブロックポリマーを主成分とするホットメルト形がある。また、利用目的別の分類として(1)有機溶剤や水を揮発させることにより強力な初期接着力を発現するコンタクト形接着剤(2)被着体としての未加硫ゴムを加圧下、高温で加硫する際に同時に繊維、金属等に接着しうる加硫接着剤(3)液状ゴムに代表される常温架橋形接着剤(4)粘着剤がある。ゴムの種類によって、天然ゴム系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、スチレン-ブタジエンゴム系接着剤、ブチルゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤など様々なものが存在する。
固有接着|specific adhesion
被着体と接着剤との結合の形の一つで、ファンデルワールス力のような分子間力や共有結合、水素結合、イオン結合などが界面に存在して接着していること。機械的接着(投錨効果)に対比して用いられる。
=比接着
関連用語:機械的接着、分子間力
コールドシール|cold seal
塗布乾燥した部分にタックはないが、塗布面同士を合わせて常温かつ比較的低圧で接着することができる接着剤。接着剤を塗布された面同士でははり合わせることができるが、塗布されていない面とは接着しない。またヒートシール剤のように加熱も必要ないことから、食品の包装や封筒、梱包材料など幅広い用途で使用されている。
=アベックのり、アドヘア、セルフシール
関連用語:ヒートシール
コールドフロー|cold flow
ある物体に一定荷重をかけたとき、その変形または伸びが時間的に変化するクリープのうち、室温において起きる現象。ゴムが対象となる場合には低温塑性流れともいわれる。
=低温流れ
コンタクト形接着剤|contact adhesive
被着体の双方に塗布し、所定の時間後にはり合わせるとすぐに大きな強度が発現するような接着剤。天然ゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系などのゴム系溶剤形接着剤がこれにあたり、粘着剤(感圧接着剤)はこれに含まない。これらのゴム系接着剤を被着体に塗布して溶剤を揮発させると、タックは次第に減少するが接着剤層の凝集力は次第に増加する。適切なタックを保有し、かつ適切な凝集力が発現した時点で接着剤塗布面同士をはり合わせるとすぐに接着強さが発現する。接着剤を塗布してからはり合わせるまでの時間をオープンタイムという。
=コンタクト接着剤、コンタクト型接着剤、コンタクトセメント
関連用語:オープンタイム
コンディショニング|conditioning
試験前に試料を一定の温度および/または湿度の雰囲気中に一定時間置くこと。プラスチックや接着剤などの性質は温度の影響を受け、湿度(したがって試料の含水率)によっても影響を受ける。試料の置かれた状況による測定値のばらつきをなくし、再現性を高めるためにコンディショニングを行う。試料の温度や含水率が外部雰囲気と平衡状態に達する時間は、試料の大きさや形状によって変わるため、それぞれの試験法に定められた条件を守る必要がある。