用語集
「た行」の接着用語集
「た行」一覧表
用語集
あ行・か行・さ行・た行・な行・は行・ま行・や行・ら行・わ行「た」から始まる接着用語
耐久性|durability; permanence
長期の荷重あるいは環境の作用に対して、材料あるいは製品がその機能を維持する性質。特に、接着に関しては接着接合の劣化作用に対する抵抗性をいい、接合部の繰り返し荷重による疲労特性、クリープ特性、浸漬後の接着強度特性などが目安になる。実際には、材料なり製品なりがどのくらい長期の使用に耐えるかという意味で使用される。したがって同一材料あるいは製品であっても、使用条件により耐久性は異なる。耐久性を支配する因子には負荷の大小と繰り返しの頻度、温度、湿度などの環境条件、日光、薬品に対する暴露の有無などがある。
耐候性試験|weathering test
材料あるいは製品を日光、雨、冷暑などの屋外条件にさらした場合の劣化に対する抵抗性を調べる試験。実際に屋外に並べて暴露する屋外暴露試験と屋外条件を人口太陽光と人工降雨により装置内で再現する人口促進暴露試験(artificial accelerated exposure test; artificial weathering)とがある。前者は長期間を要するうえに、地域差の問題があり、後者は屋外暴露との相関がとりにくいという問題がある。後者を利用する場合、両者の相関関係が明らかになっているものについては寿命予測が可能である。後者を実施するために設計された試験機を耐候性試験機(ウェザオメーター;weatherometer)と呼ぶ。
=耐候試験
関連用語:屋外暴露試験
耐水性接着剤|water resistant adhesive; water proof glue
接合物が長期間、水や高湿度にさらされても接着性能の劣化がない接着剤。合成高分子系接着剤が登場する前は、デンプン、にかわ、カゼイン、アラビアゴムなどの天然高分子が接着剤として使用されていたが、いずれも耐水性に劣り、耐水性接着剤が要望されていた。合成高分子系接着剤でも耐水性に低いものがあり、例えば合板の製造ではユリア樹脂(尿素樹脂)系接着剤は耐水性が低く、フェノール樹脂系接着剤やメラミン樹脂系接着剤が耐水性接着剤ということになる。
=耐水接着剤
堆積|assembly
接着剤を塗布した部材を、圧締、接着を行いうる状態に積み重ねる(はり合わせる)こと、または積み重ねた(はり合わせた)もの。=アセンブリー、たい積
関連用語:アセンブリータイム
第二世代アクリル系接着剤|second generation acrylic adhesive
基本的な構成成分として、ポリマーであるエラストマー、それを溶解するアクリルモノマー、それを硬化させる重合触媒である有機過酸化物、硬化を促進させる還元剤からなるアクリル系接着剤。従来の反応形アクリル系接着剤に比べ、耐熱性、耐衝撃性、接着強さ等の性能が優れているため、それ以前の反応系アクリル系接着剤と区別するために第二世代と呼ばれる。二液形が主流であり、プライマー塗布型とA剤・B剤の二液混合型に分かれる。プライマー塗布型は被着材の一方の面に重合触媒を含むプライマーを塗布し、もう片面にエラストマー、アクリルモノマー、重合促進剤を含む主剤を塗布した後、この両面をはり合わせるハネムーン接着により数分で硬化させることができる。二液混合型はA剤にエラストマー、アクリルモノマー、および有機過酸化物、B剤にエラストマー、アクリルモノマー、および重合触媒が含まれており、混合後に塗布、接着することが一般的であるが、ハネムーン接着を行うこともできる。最近では、アクリルモノマーの代替としてエポキシアクリレートなどのオリゴマーを使用した低臭気タイプも登場している。エラストマーを含み、そのエラストマーとアクリルモノマーが化学的に結合し、強靭かつフレキシブルな接着剤層を形成する。特徴として、無溶剤、常温速硬化、せん断と剥離のバランスが良い、油面接着性に優れる、2液の混合比がラフでもよいなどが挙げられる。
=SGA
関連用語:アクリル樹脂系接着剤、構造用接着剤、ハネムーン接着
多層接着剤|multiple-layer adhesive
2層以上の異なる組成の接着剤から構成されているフィルム状接着剤。サンドイッチ構造におけるコアと表面材との接着の場合のように、異質な被着体同士の接合に使用される。
関連用語:フィルム接着剤
タック|tack; quick stick
粘着力、保持力とともに粘着三要素の一つで、被着体に対するぬれ性を表す指標。タックの定義は厳密には規定されておらず、PSTC、ASTM、およびJISなどの規格には”非常に軽い力で、被着体に接触後、短時間に接着力を発揮することができる機能”と表現されている。また、指で触れた感触として「ベタベタ感」と表現されることもある。粘着剤が被着体に短時間にぬれていく(接触していく)能力であるため、粘着剤と被着体を短時間接触後に分離するのに必要な力として測定・評価されるが、これは一つの極限値を求めたものであり、定義通りの測定は困難である。そのため種々の方向からのアプローチが試みられ、測定法が非常に多く存在する結果となった。試験方法はJIS Z0237などに規定されている。
関連用語:粘着剤、粘着力、保持力
だぼ継ぎ|dowel joint
板材のはぎ合せ接合法の一種で、片方の接合面のだぼ立てと、他方のだぼ穴とによる平継ぎ接合法。孔(だぼ穴)にだぼ(太枘;円柱または角柱状の小材片)を入れることで接合される。家具製造における部材接合によく用いられる接合法で、その際、接合をより十分にするために、だぼ立てあるいはだぼ穴のいずれかに、酢酸ビニルエマルションを塗布または流し込むことが行われている。
関連用語:ほぞ継ぎ
だれ止め材|antisagging agent
塗料、シーリング材などを施工する場合に、粘度が低く完全硬化するまでに液が垂れ下がることを防止するために配合される材料。主としてチクソトロピックなケイ酸塩あどがある。
弾性シーリング材|elastic sealing compound
施工後に硬化し、ゴム状弾性を発現するシーリング材。一般にポリサルファイド、変性シリコーン、ウレタンなどの液状ゴムをビヒクルとし、これに鉱物質充てん剤をよく練り混ぜて製造したもので、相対変位の比較的大きい部材や部品間のすきまを充てんする不定形シーリング材をいう。
=弾性シーラント
関連用語:ビヒクル、シーリング材
タンパク質接着剤|protein adhesive
主成分がタンパク質である接着剤の総称。代表的なものとして、カゼイングルー、大豆グルー、ゼラチンおよび血液アルブミンがある。
関連用語:カゼイングルー、アルブミン接着剤
単板|veneer
原木をナイフによって切削してできた厚さ0.2~6mm程度の薄い一枚板。=ベニヤ
単板積層材|laminated veneer lumber
単板を繊維方向が平行になるように積層し、接着剤で一枚の板材にした積層材。合板が各層の繊維の向きを直交させるのに対し、単板積層材は同じ向きにそろえられている点が違う。
=LVL
関連用語:合板
単量体|monomer
1種あるいは複数種の構成単位をつくり得る低分子量の化合物。重合反応またはオリゴマー化反応によりポリマーまたはオリゴマーとなる。重合反応様式と分子形態により次のように分類することができる。(1)不飽和結合の開鎖により重合するαーオレフィン、ビニルモノマー、ビニリデンモノマー、ジエン、アセチレンなど(2)開環重合によりポリマーを形成する環状エーテル、環状酸無水物、ラクタム、ラクトン、シクロアルカンなど(3)重縮合、重付加、酸化重合、脱離重合などにより重合するジアミン、ジカルボン酸、ジイソシアナートなどがある。
=モノマー
関連用語:二量体、三量体、オリゴマー
「ち」から始まる接着用語
チェック防止剤|antichecking agent
チェッキング(浅割れ)防止のための材料。一般的には、軟化剤、可塑剤が用いられる。ある種の酸化防止剤も効果がある。
関連用語:割れ
チクソトロピー|thixotropy
ゲル状となった高分子相が、攪拌や振とうによって流動性をもつゾル状になり、放置によって再びゲルに戻る性質。異常粘性の一種で、一定のせん断速度状態において見かけ粘度が時間と共に減少し、せん断応力を取り除くと徐々に復元する時間依存の流動特性である。一般にコロイド粒子が異方性の形状を持ち、これら粒子間のゆるい結合でゲルを形成しやすい系で観察され、可逆性を持つ。このゲルに外力を与え、その内部結合の一部または全部が破壊されると流動性を示すが、放置によって粒子間の結合が再現されてゲルとなる。この現象を利用すると、被塗付体または被着体が垂直面であっても、接着剤や塗料は塗付後流れなくなり、塗付厚さのムラの少ない塗膜を得ることができる。
=揺変性
関連用語:だれ止め材
超音波接着|ultorasonic bonding
加熱によって軟化・溶融しない被着体について、被着体間に接着剤を挟み込み、超音波振動(周波数18~40kHz)を与えることによって、接着剤と被着体の表面を内部ひずみと衝突、摩擦現象により加熱させ、接着剤を乾燥、溶融、硬化させて接着させる方法。熱可塑性プラスチックのように加熱によって軟化、溶融する被着体に超音波振動を与えることによって被着体表面を発熱させ、被着体が軟化、溶融し始めたところで圧縮し相互拡散現象により分子間の結合をつくって溶融接着させる方法は超音波溶接または超音波溶着(ultrasonic welding)と区別して呼ばれることがある。
ちょう度|consistency
固体と液体の中間にあたる物質の硬軟の程度を表す実用的な指標で、変形が応力に比例しない場合の変形に対する物体の抵抗力のこと。物質あるいは測定方法により色々な物性が関係するため、材料の基本特性ではないが粘度、塑性などの性質を含んだ指標といえる。単純な場合には、見かけの粘度に支配されると考えてよいが、降伏値や破断強さが関係している場合もある。
=稠度、コンシステンシー
チョーキング|chalking
屋外暴露などによってプラスチック、ゴム、塗料などの表面が粉化する現象。熱、紫外線、雨風などによって表面の高分子が劣化して、充てん剤、顔料などが露出し、最終的にはそれらが粉状になって表面に付着しチョーク様を呈する現象をいう。
関連用語:ブルーミング
貯蔵安定性|storage stability
容器内に貯蔵した製品の経時品質安定性。貯蔵に伴う変化の様相は接着剤の種類や容器などによりさまざまであるが、判定基準としては、状態および塗布作業面(外観、塗布性、粘度)と接着性能の確認が主体である。短期に判定するために、接着剤の種類に応じた促進試験法が用いられることもある(JIS K6833-1ほか)。実用的な意味では冷暗所保存が共通して推奨されるように、温度が最大の影響因子である。その他に湿気、光などが重要因子になるケースもあり、水性接着剤では防寒対策(凍結融解安定性)が必要になることもある。
貯蔵寿命|shelf life
=シェルフライフ「つ」から始まる接着用語
疲れ接着強さ|fatigue adhesive strength
接着接合部が無限回数の繰返し応力に対しても破壊しない強さ。接着においては、実用上1000万回までの繰返し応力をとることがある。試験方法はJIS K6864などに規定されている。
関連用語:疲労限度
突き合わせ接合|butt joint
被着体の端部と端部、もしくは端部と平面を突き合わせて接着接合する方法。=バットジョイント、突合せ継手
「て」から始まる接着用語
デキストリン接着剤|dextrin adhesive
デンプンを酸またはアミラーゼによって部分的に加水分解させるか、あるいは加熱することによって得られる分解生成物による接着剤。デキストリンはつくるときの方法、および条件によってアミロデキストリン、エリトロデキストリン、アクロデキストリンなどがあり、白色または黄色の無定形の粉末で、水に可溶である。錠剤、乳化剤などにも用いられる。
添加剤|additive; chemical admixture
プラスチック、ゴムなどの性質を改良するために加える物質の総称。改良目的により種々の添加剤があるが、たとえば安定剤、可塑剤、柔軟剤、滑剤、硬化剤、硬化促進剤、強化材、充てん剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、老化防止剤などがある。
天然物系接着剤|natural adhesive
天然高分子を主成分とする接着剤。第2次世界大戦前までは天然高分子材料が接着剤の主流であったが、戦後急速に合成高分子が普及した。しかしながら、各々がそれぞれの材料の特徴を生かして、現在も使用されている。例えばデンプン、カゼイン、にかわ、ゼラチン、フィブリン、水ガラス(珪酸ナトリウム)などがある。
「と」から始まる接着用語
凍結安定性|freeze-thaw stability
凍結ー融解時のショックに対するコロイド分散液の安定性のこと。合成樹脂エマルションやゴムラテックスのようなコロイド分散液が貯蔵中に凍結ー融解するような状態に置かれたとき、しばしばその分散状態に変化が生じる。軽度の場合は粘度の上昇のみに止まるが、さらに進行すると系全体が凝固して流動性をなくし、使用不能となるため、特に寒冷地においては重要な性質である。一般にその向上のためにエチレングリコール、グリセリンのような凍結防止剤が添加される。
導電性接着剤|electroconductive adhesive
電気回路の配線の接合に用いる導電性をもつ接着剤。エポキシ樹脂に銀粒子を配合したものが性能が良く、早くから実用化された。導電性を与えられる材料には銅、カーボンブラックなど、いろいろなものが検討されている。
=電導性接着剤
投錨効果|anchor effect
=アンカー効果ドクターナイフ|doctor knife; doctor bar; doctor blade
塗料または接着剤などの塗布に際し、塗布面を均一に覆い、かつその塗布厚さを所定の厚さに調節するために、塗布機に取り付けてあるブレードのこと。=ドクターバー、ドクターブレード
ドクターロール|doctor roll
ロール塗布機において、紙、織布、フィルム、シートなどに液状接着剤または塗料などを塗布する際に、その塗布厚さを所定厚さ、および均一塗布できるように取り付けるロールのこと。一般には、塗布ロールとは反対方向に回転して、塗布ロール上の余分の塗料や接着剤などをふき取り、その厚さを調節する。またドクターロールは塗布ロールと同方向に回転させても、その両ロールの回転速度を変えることにより前記同様の効果を上げることができる。
ドープセメント|dope cement
接着すべきプラスチックと同種のプラスチックの溶剤溶液。例えば繊維材料の紡糸用の濃厚溶液(ドープ)のうち、硝酸セルロース(ニトロセルロース)などの繊維素系プラスチックの5~20%程度の溶液などである。被着体となるプラスチックと同種の熱可塑性プラスチックを溶剤に溶かすことで接着剤となり、かつてはプラスチックなどの接着剤に使用されていた。
ドライタック|dry tack
溶剤形接着剤を塗布後、溶剤が揮発して指で触れたとき乾燥状態に見えても、塗布面同士は接触によってよく接着できる現象。ドライタックの状態で堆積して加圧すると良好な接着が得られる。非加硫形のゴム系接着剤やコンタクト形接着剤によく見られる現象である。
関連用語:溶剤形接着剤、指触乾燥